【第6回】続けてよかった。報われた瞬間

キャリアストーリー

「あなたの努力を正しく評価できる人は、必ずいます」

前回は、孤独だった時期の話をしました。今回はその先――続けてきたからこそ訪れた、報われた瞬間の物語です。

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転機――新しい社長の就任

転機は、突然やってきました。

外部から、新しい社長が就任したのです。

この新しい社長は、それまでの経営陣とは全く異なる視点を持っていました。先入観なく、実績を正当に評価する人でした。社内の力学や人間関係に縛られず、「この会社に何が必要か」というシンプルな問いを持って物事を判断する人でした。

社長就任後、私がそれまで取り組んできたことを報告しました。売掛金の改善状況、各事業所の業務効率化の取り組み、提案書の内容、実現できた成果、これからやりたいこと。

一つひとつを聞いた社長は、こう言いました。

「もっと聞かせてください」

実績を正当に評価してもらえるということが、こんなにも力になるのか。それが初めて実感できた瞬間でした。長い年月をかけて積み上げてきたものが、ようやく見えるところに出てきた感覚でした。

「やってきてよかった」という言葉が、自然と心の中に浮かんできました。

このことから一つ伝えたいことがあります。あなたの努力を正しく評価できる人は、必ずいます。 今の環境にその人がいないとしても、諦めないでほしい。評価してくれる人との出会いは、続けてきた人にだけ訪れるものです。


本社への転勤――会社全体を見渡す立場へ

社長就任からしばらく後、私は本社に転勤することになりました。

地方事業所での経験を生かし、会社全体の業務改善に取り組む立場を与えてもらったのです。これは、私にとって大きなステップでした。一事業所だけでなく、会社全体を見渡す立場で動けるようになったからです。

本社では、それまで提案してきたことを、より大きなスケールで実現できるようになりました。地方事業所で試してきた改善のアイデアが、会社全体に広がっていく。

地方事業所での時間は、無駄ではなかった。むしろ、会社全体を変えるための準備期間だったのだと、後になって気づきました。


役員就任

本社転勤から2年後、私は役員に就任しました。一般事務員として3社目に入社してから、26年後のことです。

感慨深かったです。でも、劇的な変化というよりは、「続けてきたことの延長線上にある」という感覚でした。

役員になったから偉くなったわけでも、特別な存在になったわけでもありません。ただ、自分が信じてやり続けてきたことが、少しずつ形になってきた。その結果として、今の立場がある。そう感じています。

そして役員になってからも、私は現場の課題を解決し続けました。むしろここからが、長年温めてきた取り組みが本格的に実を結ぶ時期でした。


念願のデジタル化が実現した日

念願だった請求書・納品書のデジタル化が実現したのは、役員就任後のことです。

それまで紙で行っていた処理をデジタル化することで、各事業所の事務員の業務量が大幅に削減されました。締め日に残業を余儀なくされていた事業所が、定時に帰れるようになりました。通信費の削減にも貢献し、書類の紛失リスクも減り、検索の手間も省けた。それによって生まれた時間を、もっと重要な仕事に使えるようになったのです。

この取り組みは、地方事業所にいた時から提案し続けてきたことでした。「キャッシュレス化やデジタル化は時代の流れだ」と言い続けていたのに、何年もかけてようやく実現したこと。支店長会議で猛反対を受けていた提案が、時代の変化とともに「当たり前」になっていく。

正直に言えば、追い風もありました。政府がIT導入補助金を強化したこと、働き方改革が進み在宅ワークも視野に入ってきたこと。いろんな事象が重なって、ようやく実現できた面もあります。その点は、恵まれていたのかもしれません。

でも、追い風が吹いた時にすぐ動けたのは、何年も前から準備し、言い続けてきたからです。チャンスは、準備していた人のところにやってきます。そのことが、「先を見る目」を持ち続けることの大切さを教えてくれました。

実現した時、ある事業所の支店長から連絡がありました。

「本当に助かっています。ありがとうございます」

その言葉が、何よりも嬉しかった。自分が一般事務員だった時に「なんとかならないか」と感じていた問題が、解決できた。その実感は、今でも胸の中に残っています。

この瞬間に気づいたことがあります。「自分が事務員だった時に感じた不満や疑問」こそが、最高の改善の種だった、ということです。

あなたが今感じている「これ、なんとかならないか」という気持ちは、未来の誰かを助ける改善のアイデアになりえます。その気持ちを、大切にしてください。


不良売掛金ゼロの達成

売掛金管理の取り組みも、着実に成果を出しました。

本社に移ってからさらに整理を強化し、地道な調査と回収への粘り強いアプローチを続けました。そして女性事務員一人ひとりに「チェックの最後の砦は私たち」という意識が根づいたこと。それらが積み重なった結果、役員就任後、ついに不良売掛金がゼロになりました。

帳簿上の利益と実際の現金の乖離がなくなり、資金繰りの見通しが立てやすくなりました。会社の「体力」が正確に把握できるようになったことで、次の投資や採用の判断も立てやすくなる。それが企業経営にとってどれほど大切かを、実感として理解した取り組みでした。

膿を出し切らなければ、会社の再建は叶わない。新しい社長の考えと、私の考えが一致し、そこから一致団結で会社は再建へと進んでいきました。


役員になってからも、私の基本的な姿勢は変わっていません。「なぜだろう」と疑問を持ち続けること。「もっとよくできる」と考え続けること。「会社のためになることは提案し続ける」という信念。それは一般事務員の頃から変わらず、今も私を支えているものです。


報われる瞬間は、ある日突然やってきます。でもそれは、続けてきた人にだけ訪れる。今日のあなたの小さな積み重ねは、必ずどこかにつながっています。


次回は、いよいよ最終回。「もやもやしているあなたへ――最後のメッセージ」をお届けします。転職という選択肢、今いる場所での可能性、そして、かつての私と同じ場所にいるあなたへのエールです。


執筆者:中小企業 元一般事務員・元役員

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