【第5回】「出る杭は打たれる」――それでも続けた理由

キャリアストーリー

「やっていることは正しいと信じているのに、わかってもらえない」

そんな孤独を、感じたことはありませんか。

今回は、私のキャリアの中で最もつらかった時期の話をします。正直に、綴ります。

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管理職になって、空気が変わった

女性が管理職になった途端、空気が変わりました。

それまでは「一生懸命やっている人」として周りからそれなりに受け入れてもらっていた私が、管理職という肩書きを得た瞬間から、ある種の「敵」として見られるようになった気がしました。

陰で言われるようになりました。
「社長と仲がいいだけだろう」
「なんで一介の事務員上がりに、うちの事業所のことを指図されなきゃいけないんだ」

面と向かって言われることは少なかった。でも、そういう空気は確実に伝わってきます。会議で発言すると、場が静まり返る。提案すると、理由も言わずに「必要ない」と切られる。キャッシュレスがまだほとんど普及していない時期に経費精算のキャッシュレス化を提案しても「うちには関係ない」と一蹴される。

「何かを変えようとしている」という私の姿勢そのものが、脅威に映っていたのだと思います。


「出る杭は打たれる」の本質

「出る杭は打たれる」という言葉は、日本社会でよく使われます。でも私は、この言葉の本質についてずっと考えてきました。

出る杭が打たれる理由は、杭が悪いからではありません。打つ人が、変化を恐れているからです。

変化は不確実性を生みます。「今までのやり方を変えたら、自分の立場が変わるかもしれない」「新しいことを覚えなければならないかもしれない」「もしうまくいかなかったら誰の責任になるのか」。そういった不安が、変化への抵抗を生みます。だから、変化を提案する人が「邪魔者」に見えてしまう。

これは、悪意からではなく、自己防衛本能からくることが多いのです。

そのことを理解してからは、反対意見が来ても少し冷静に受け止められるようになりました。「この人は私を嫌っているのではなく、変化が怖いのだ」と。そう考えると、反対する人に対する見方も変わります。憎むべき相手ではなく、変化の恩恵をまだ理解できていない相手として向き合えるようになりました。

反対意見を力に変える方法は、「実績を見せること」です。言葉では伝わらなくても、数字が語る事実は否定できません。小さな改善でいいので、まず実績を作ること。それが、次の一手への足がかりになります。


中間管理職の孤独

上司と部下の間に挟まれる中間管理職の立場には、独特の孤独があります。

部下には「どうしてこんなこと言うんですか」と反発される。上司には「もう少し周りと協調しなさい」と諭される。「わかってもらえない」という感覚が、最もつらい時期でした。

やっていることは正しいと信じているのに、その正しさを証明するには時間がかかる。その間の孤独は、なかなか言葉では表せないものがあります。

特に女性の中間管理職は、その孤独が深くなりがちです。「女性のくせに」という視線と「女性だから」という過剰な期待の両方にさらされながら、自分のスタンスを保つのは容易ではありません。男性の上司や同僚が理解してくれないだけでなく、時には女性同士の中でも「なぜあなただけが」という目を向けられることがある。

あなたが今、同じような状況にいるなら、伝えたいことがあります。

その孤独は、あなたが間違っているからではありません。 変化の最前線にいる人間が感じる、避けることのできない孤独です。変化を提案し続ける人は、常に少数派です。少数派は孤独です。でも、時代を動かしてきたのは、いつも少数派でした。

孤独を和らげるために私が実践したのは、「信頼できる人を一人だけ持つ」ことでした。全員に理解してもらわなくていい。職場の中に、あるいは職場の外に、一人だけでも「この人はわかってくれる」と思える存在がいれば、続けられます。


それでも続けた理由

「なぜ諦めなかったのか」と聞かれることがあります。

答えは、信念があったからです。

自分の提案が、会社のためになると信じていた。自分のやっていることが正しいと、データが示していた。反対されるたびに「では、どこが問題なのか教えてください」と問い続けましたが、論理的な反論が返ってきたことはほとんどありませんでした。

「気に入らない」という感情は、論理では打ち砕けません。でも、実績は積み上がります。時間をかけて、少しずつ、証明し続けました。

もう一つの理由は、「いつか変わる」という感覚を持ち続けていたからです。環境は変わります。人は変わります。時代は変わります。今の状況が永遠に続くわけではない。だから、今自分がやるべきことをやり続ければ、必ず状況は動く。その確信が、私を支えていました。

そして実際に、転機は訪れました。

入社から長い年月を経て、外部から新しい社長が就任するという転機です。その時まで、私は自分の信念を持ち続けることができていました。だから、転機をつかむことができた。もし途中で諦めていたら、その転機に気づくことも、活かすことも、できなかったと思います。


今、孤独の中にいるあなたへ。

その孤独は、あなたが前を向いている証です。続けてさえいれば、必ず転機は訪れます。その時のために、信念だけは手放さないでください。


次回は、ついに報われた瞬間のお話です。新社長との出会い、本社への転勤、念願のデジタル化、そして役員就任。続けてきたからこそ訪れた、転機の物語をお届けします。


執筆者:中小企業 元一般事務員・元役員

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