【番外編⑥】大先輩の事務員と、距離を縮めるまで

キャリアストーリー

管理職になり、女子社員のリーダーにもなったとき、私よりずっと先輩の女性社員がいました。勤続35年、他の地方事業所に在籍する、いわば大御所的な存在です。定年までもう数年、というタイミングでした。

大先輩を差し置いて上に立つことに、正直、最初は戸惑いがありました。年功序列ではないとはいえ、年下の自分が先に立っていいのだろうか、と。


真っ先に訪ねた、先輩の事業所

全国の事業所を訪問できることになったとき、真っ先に向かったのが、その先輩のいる事業所でした。目的は、各事業所がどのようにシステムを使い、業務を進めているかを把握し、全国的に平準化すること。

現地に足を踏み入れて、少し驚きました。整理整頓がなかなか行き届いていない様子で、日々の忙しさの中で後回しになってしまっていたのだと感じました。支店長は明るくいい方でしたが、事務所全体の雰囲気はどこか張り詰めていて、その中心にいたのが先輩でした。口数は少なく、こちらが何か伝えると、少し機嫌を損ねてしまうこともありました。

特に気になったのは水回りでした。日々の業務に追われ、そこまで手が回っていない様子でした。支店長に状況を確認すると、「自分が時々掃除している」とのこと。事務所全体に、業務を見直す余裕がなくなっているのだと感じました。

書類の管理も同じように後回しになっていて、本社に何をどう報告すべきか、正直悩みました。


大事にしたのは「仕事を離れた時間」

そこで私が大事にしたのは、仕事を離れた時間を作ることでした。出張の夜は、必ず先輩と食事の時間を取るようにしたのです。お酒を少し交えながらの食事では、日中は口数少ない先輩が、ぽつりぽつりとプライベートな話をしてくれるようになりました。

一度きりではなく、先輩が退職するまで何度も事業所を訪ね、同じように時間を重ねました。少しずつ打ち解けてもらえるようになり、それまで伝わらなかった改善も、素直に受け入れてもらえるようになっていきました。


少しずつ、生まれ変わった事業所

社長への報告書には、数年後にやってくる世代交代のタイミングで、事務所を立て直す計画を立てるべきだと明記しました。社長はこの現状に驚き、本社としても事業所の状況をあらためて見直すきっかけになりました。それから、私自身も何度か事業所を訪れ、書類整理や帳簿管理などを一緒に整えていきました。

世代交代のタイミングで、事務所はすっかり生まれ変わりました。新しく入る社員への引き継ぎは、これまでの経緯を踏まえて、私自身が担当することにしました。

人を変えることはできなくても、自分の関わり方を変えることはできる。この先輩との時間は、そのことを教えてくれた出来事でした。


執筆者:中小企業 元一般事務員・元役員

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