第4回】コツコツ積み上げた、私の仕事術④⑤――気づいたなら、動く

キャリアストーリー

「気づいたからには、動かなければ何も変わらない」

前回に続き、私が実践してきた仕事術をお伝えします。今回の2つは、私のキャリアの大きな転換点になったものです。

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仕事術④ 女性事務員の力を社長に直談判――気づいたなら動く

課長職に就き、地方事業所の女性事務員たちのリーダーになった時、私は一つのことを確信しました。

「会社の業績を左右するカギは、各事業所の女性事務員が握っている」

受注も、発注も、請求書の処理も、顧客との細かな連絡も、実際にその大部分を動かしているのは事務員です。でも、そのことが会社として明確に定義されていませんでした。「事務員は補佐的な役割」というぼんやりとした位置づけのまま、実態とはかけ離れた扱いが続いていた。事務員が頑張るほど「当たり前」と思われ、評価されない構造があったのです。

私はこの状況を変えたいと思い、提案書を作成しました。内容は大きく二点です。

一つ目は、「受注および発注は事務員が中心に行う業務として、会社として定義すること」
二つ目は、「各事業所の現状を把握するために、事業所を直接訪問する機会がほしい」

提案書には、現状の問題点と、改善による具体的なメリットを数字で示しました。感情的な訴えではなく、データと論理で伝えることを意識しました。

提案書を持って、社長室の扉を叩きました。正直、怖かったです。「こんな提案をして、どう受け取られるか」という不安、拒否されたらという恐れもありました。でも、気づいたからには動かなければ何も変わらない。それが私の信念でした。

社長は提案書を読んだ後、こう言いました。

「やってみなさい」

この一言が、私のキャリアを大きく動かすことになりました。

各事業所を訪問し、現状を自分の目で確認しました。業務の流れが非効率だったり、情報共有がうまくいっていなかったり、書式がバラバラだったり。問題を把握したら報告書にまとめ、社長と協議しながら一つひとつ改善していく。このサイクルを繰り返すことで、会社全体の方向性が少しずつ変わっていきました。

「直談判」と聞くと、ハードルを感じる人は多いと思います。でも、提案書というのは、相手を説得するツールであると同時に、「自分はここまで考えました」という誠意を見せるツールでもあります。

準備してから動く。思いだけでなく、根拠を持って動く。それが、直談判を「わがまま」ではなく「提案」にする違いです。

最初は小さな提案からでいい。「この書類の様式を変えたい」「この連絡方法を変えたい」。そういった身近な提案を積み重ねることで、「この人の提案は聞いてみよう」という信頼が少しずつ育っていきます。


仕事術⑤ キャッシュの考え方を広める――利益 ≠ 現金

「今月の純利益が出ています」と経営会議で報告されても、実際に手元に現金がなければ、給料も払えないし、仕入れもできない。

これは経営の基本中の基本の話ですが、意外と多くの中小企業で共有されていない感覚です。「利益が出れば手元に現金が増える」と思い込んでいる社員は少なくありません。でも実際は、利益は発生しているのに現金が回収されていない、という状況が起こりえます。売掛金として計上されているだけで、実際には入金がないのです。

この問題を実感したのも、売掛金の調査をしていた時のことです。帳簿上では利益が計上されているのに、回収できていない売掛金が積み上がっている。このままでは、帳簿の数字と実態がどんどんかけ離れていく。最悪の場合、黒字倒産という事態になりかねない。

「利益と現金は別物だ」

この考え方を、私は機会を見つけてはデータで示しながら伝えました。「先月の売上はいくらで、そのうち実際に入金されたのはいくらで、まだ回収できていないのがいくらある」という形で、数字を具体的に見せることで、少しずつ理解が広がっていきました。

入金されなければ支払いもできなくなること、従業員への給与も払えなくなること。そういった現実を丁寧に説明し続けることで、経営陣の意識も変わっていきました。

事務員だからこそ、この種の情報を一番近くで見ています。その情報を整理して、経営に届けることができるのは、事務員の大きな強みです。

「私には経営のことはわからない」と思う必要はありません。 自分の手元にある数字を正確に把握し、それを誰にでもわかる形で伝えること。それが、事務員が経営に貢献できる最も重要な仕事の一つだと思っています。

経営を学ぼうとする姿勢は、どんな立場からでも持つことができます。そしてその姿勢が、あなたを「ただの事務員」から「会社に欠かせない存在」へと変えていきます。


仕事術④⑤に共通するのは、「現場の事務員にしか見えないものを、経営に届ける」ということ。

事務員は補佐役ではありません。会社の数字と現場の両方を、一番近くで見ている存在です。気づいたなら、動く。その一歩が、あなたの価値を変えていきます。


次回は、「出る杭は打たれる――それでも続けた理由」をお話しします。管理職になって変わった空気、中間管理職の孤独。それでも私が諦めなかった理由を、正直に綴ります。

執筆者:中小企業 元一般事務員・元役員

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